第3の事件か?

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第3の事件か?

俺は、不思議な女に出会った。 いつもの店のバーのカウンターに一人の女が ウイスキーをロックにして飲んでいる。 ……酒に強い女だ…… と、想いつつ俺は一つ座席を空けて女の横に座る バーテンダーがいつもの様に俺のキープしたブランディー をグラスに入れる。今日は俺とこの女以外の客は居ない このバーは広くは無いが、客は十人ぐらいは入ることのができる。 カウンターは5席有り、テーブル席が席が設けられている。 落ち着いた雰囲気は、仕事で疲れた身体を癒してくれる最高の場所である。 キャバクラとは違い女性の数は二人だが、精錬された大人の女性で で、会話も楽しめる。 殆どが男性客なのだが、カップルで此処に訪れる人もある。 女一人で飲んでいるのは、初めての光景であった。 女性一人で飲んでいる時は、こちらから声を掛けるのは礼儀であろう。 「お嬢さん、見かけない顔ですが、初めてですか?」 と、囁く様に言ってみた 不意に言葉をかけられてビックリしたのか、彼女は私の顔を 強い眼差しで見つめてくる。 相当な美人だ。女優にしても良いくらいの美人である。 俺好みの知性に溢れる女。 瞬間にして俺の心を鷲掴みにする。 大きな期待が広がる。 「いらっしゃい。今日は遅いのですね」 と、店のママさんが声を掛けてくれた。 「そうなんだ。仕事でトラブって嫌になるよ!此処で飲んでから 家で寝るよ」 と、ママさんと話してはいるが、気になるのは、彼女の事だ。 ママさんは、おつまみのお菓子を私に渡してくれる。 ママさんは、歳の頃は50歳手前ぐらいだが、落ち着いた大人の魅力は健在で長年この店を任されている。 もう一人の女性は三十代でこの人も美人だ。 だが、今日は居ないみたいだ。 気になる彼女は、無言のままウイスキーを飲んでいる。 瞳を伏せ、静かに飲む姿は失恋を癒しているかの様だ。 ……この様な美人でも失恋する事が有るのか?…… と、想いつつ、俺はブラディーを飲み干す。 「ウイスキーがお好きなんですか?ブラディーは如何ですか?」 と、俺は声を掛けてみる。 彼女は怪訝そうに、俺をみたが、少し微笑みで見せてくれた。 「ブラディーも好きです。と言うか洋酒は好きです。 日本酒は駄目ですが」 と、小声で囁く様に呟いた。 何とも可愛い仕草が俺の瞳に入る。 「では、一杯お飲みください。私奢りで」 俺はバーテンダーにブラディーを女性に差し出す様に伝えた。 女性は嬉しいそうに、ブラディーを見つめ私に笑顔を返す。 俺は席を一つ詰め、彼女の隣に座った。 彼女はそれを拒む事は無い。 良い雰囲気の中、会話が弾んで行く。 彼女は酒が強いみたいで、ブラディーを何杯飲んでも 酔いはしないみたいだ。 俺のキープしたブラディーが空になる。 俺は酔い潰れて寝てしまった。 気がつくと、俺は一人カウンターで寝ていた。 女性はすでに帰ったとの事。 「広瀬さん、女の人を口説こうと思って、お酒を飲ましても、あっちの方が断然強いよ。先に酔い潰れるんだもの」 と、ママさんから、少し嘲笑気味に言われる。 恥ずかしい想いと、残念な想いが交錯する中、 時計を見ると時刻は午前3:00 を、過ぎていた。 「あの女性は、初めての客ですか?」 「そうね、初めての人ね。綺麗な人でしたね。でも、少し翳りがあるわね。気を付けてね。あの女は怖いかもよ」 と、冗談めいたように明るくママさんは言った。 その言葉を俺は軽く受け流して聞いていた。 …もう一度、彼女に会いたい!… と、強く願う俺だった。 俺は、最近妻と離婚したばかり。 四十代の男盛りは、新たな女を求めても仕方が無い。 俺の名前は、広瀬賢治。 俺はバーテンダーに「あの女が来たら必ず電話をしてくれ」 と、頼んでおいた。 だが、彼女はその店に姿を現す事は無かった。
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