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自分の教え子に特別視されたい為なのか、それとも態と敷居を低くして教え子と通じ合いたい為なのか、下卑た若者言葉を真似る大学教授は、キャンパスにてお気に入りの教え子と散歩を始めると、今日もマジレスで頼むよと前置きして聞いた。「韓国の子って幼い頃からキムチ食ってるから肌が綺麗じゃね?」
「キムチって美肌効果があるみたいですね」
「おまけに腸もスタイルも整えてくれる効果があるから素人でも健康美人が多くね?」
「そ~ですか」
「だってさ、韓国のチャットガールってレベル高って思うし~、諸肌脱いでBGMに合わしてデカいナイスなおっぱいプルプルさせて踊ったりして、こいつクレージーかよって思うんだけど、スタイルもルックスもええし~、ま、えっかって思うから~、みさぴょんもやってみねえ?」
「えっ、あたしの裸見たいからって何言ってるんですか」
「いや、だってさ、ネット社会に生きる我々はネットを活用して隠れた魅力をアピールするべきだし~、みさぴょんはスタイルええし~、顔だって日本の今時のヤングギャルと違って出っ歯じゃねえから韓国のプリティガールに負けず劣らずかわええし~」
「日本の今時のヤングギャルって出っ歯なんですか?」
「あれ、みさぴょんも気づいてね~の?」
「…」
「ま、確かに前の前の前の世代からずっと見てきた僕と違って変化に気づけねえし~、今の状態が当たり前と思うから出っ歯になってるとは思えねえのは当然と言えば当然だがね、節穴なら兎も角、僕の世代なら気づく筈なんだが、誰も指摘しねえし~」
「何ででしょう?」
「日本人って事勿れ主義っつーかさ、波風立たねえようにするし~、白黒はっきりつけたがらねえじゃん。で、ほんとのこと言うと、何かと角が立つっつーかさ、人が不快に思うことは言わねえでおこ綺麗事で済ましておこみたいな~、でも、みさぴょんは出っ歯じゃねえからみさぴょんの前では言えたし~」
「あたしは他の子と違うんですか?」
「うん、違う。多分、他の者と違って幼い頃から歯応えのある物を食ってきて下顎が正常に発達したからじゃね?」
「そう言えば、あたし、スルメをよく父親と食べてました」
「ほう、スルメを。あれはいいよ。噛み切る時に顎使ってる感半端ねえからね。でも嘗めるだけじゃね、ちゃんと噛んでた?」
「はい、毎夜、晩酌に付き合わされて自然と食べるようになったんです」
「なるほど、父親のつまみをつまみ食いってか。そりゃあ出っ歯にならねえ為のいいお薬になったね」
「でも馬鹿に付ける薬はないように出っ歯に付ける薬もないですよね」
「上手いこと言うね。確かに下顎が小さい所為で上の前歯が通常より前に出て見える出っ歯は矯正治療しようとすると、変なことになりそうだし~、出っ歯を直接治す薬はねえし~、お顔に似合わず辛辣なこと言うね」
「ふふ」
みさぴょんこと美沙都が笑い、談笑する数人の女子大生と擦れ違った後、大学教授は言った。
「僕にはどうしても彼女らがクワックワッて鳴いてるようにしか認められねえんだよ」
「何でですか?」
「出っ歯だと自ずとアヒル口になるだろ。それが目に付くからじゃね?」
「先生も相当辛辣ですね」
「ハハハ、ま、しかし、昨今の女子中高生が憧れる女子アイドルももろ出っ歯でアヒル口だし~、あんなのに憧れるのは異常だと思うし~、実際ヤングギャルたちの口元を見ると、日本女性の劣化を嘆かざるを得なくなるからつい言いたくもなるんだよ。そこへ行くと、みさぴょんはええね。だから僕の晩酌に付き合ってくれね?」
「えっ、先生の家でですか?」
「うん、今時は高価だけど、僕の子供の頃は駄菓子屋さんへ行けば子供の小遣いで買えたスルメもあるし~、それはそうと、みさぴょんっていける口なんだろ」
「まあ…」
「確かにセクハラ紛いのことはするが、みさぴょんが心配するようなことする訳ねえし~、だって大学教授だし~」
「でも変な噂が立ちませんか?」
「つまり僕の家に出入りする所を知り合いかなんかに目撃されたらってか」
「はい」
「やっぱやばくね?」
即、頷く美沙都。
「じゃあ、チャットガールやらね?」
「嫌ですよ。裸踊りなんか」
「いやいや、そこまで期待してねえよ。エロオヤジみたいに見ないでよ」
ふふと笑う美沙都を横目に形無しになる大学教授は、出っ歯のみならず今時のヤングギャルとは様相が全く異なる気がして美沙都に対し扱い難さを感じるのであったが、実際、出っ歯に付ける薬はなく、美沙都以外に好きになれる教え子はいないのであった。
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