36人が本棚に入れています
本棚に追加
/11ページ
おまけ:その5『同窓会?』
それは静かな午後のこと。
会計作業に遅れがあり、天王寺と浅見は特別生徒室にいた。
そうそうに処理を終え、浅見のチェックを待つ間、天王寺は無言でパソコンを眺めていた。
しばらくすると、突然デスク画面を両手掴み、破壊する勢いで震えだす。
その異様な光景に、浅見は思わずペンを落としたほどだ。
天王寺が奇妙な行動を見せるときは、間違いなく姫木絡みで間違いないが、このままではパソコンが壊れるかもしれないと、浅見は一応止めに入る。
「尚人、落ち着け」
「落ち着いてなどいられぬ」
「どうしたんだ」
一体何を見ているのかと、浅見は渋々席を立つと天王寺のパソコンを覗き込んだ。
そこにあったのは、『同窓会』の体験談の数々。
まさか、天王寺が同窓会に参加するのかと、浅見の方が息を飲んでしまう。
親しくしていた友人も、先生もいた覚えはないし、そもそもそういったものに一切興味はないはずだった。
だから、
「参加するのか?」
と、呟くように口を出た。
「私ではない。姫が今週末出掛けると申したのだ」
それを聞き、浅見はわずかにほっとしたが、画面に載る掲載文が危険すぎた。
『数年ぶりにあった彼に誘われて、一夜の……』
『初恋のあの人は、とても綺麗になってて……』
『妻とは上手くいっていないと言われて……』
『昔の恋が再び熱く……』
それはそれは、危険な恋模様が無数に書き込まれていた。
つまり、これを読んだ天王寺は、姫木が別の奴と恋に落ちるかもしれないと考えたのだ。
よって、すでに恋に落ちている天王寺の妄想は止まらない。
「行かせるわけにはいかぬ」
見えない相手に向かって、嫉妬心むき出しで天王寺は、低く声を出した。
「そこに女性もいるのか?」
「男友達だけで会うと申しておったので、おらぬが」
「だったら、余計な心配はないだろう」
掲載されているのは、全部男女の体験談。男同士で騒ぐなんて普通だと、よくあることだと浅見は天王寺に言ったのだが、ものすごい勢いで服を掴まれた。
「冬至也は、わかっておらぬ」
メラメラと燃え盛る瞳に見つめられ、浅見は絶対ありえないだろう妄想の世界へと誘われた。
最初のコメントを投稿しよう!