おまけ:その5『同窓会?』

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【妄想その1】 「姫木、前より可愛くなったよな」 「可愛いってなんだよ、俺は男だって」 「昔から可愛いって思ってたけどな」 男友達はそういって、姫木の頭をくしゃりと掴む。 すると、姫木は少しだけ赤い顔をしてみせる。 「お前だって、カッコよくなったよな」 「なあ、俺の初恋はお前だって知ってたか?」 鼻の頭を掻きながら、男は姫木をそっと抱き寄せる。 抱き寄せられた姫木は、耳まで赤くして、そっと盗み見るように視線を上げる。 「なんだよ、それ」 「可愛いお前が悪いって」 「男に可愛いなんて言うな」 「姫木、可愛いよ」 言うなと言ったのに、男は姫木の髪を弄びながら柔らかく微笑んで見せた。 そして男は、姫木をゆっくりと押し倒して、 「今でも、お前が好きだよ」 と、告白する。 それを聞いた姫木は、視線を反らして困った顔を浮かべた。 「ごめん、俺、……好きな人、いる」 迷うように言った姫木の髪が優しく撫でられ、男はゆっくりと姫木に覆い被さる。 「そんな奴、俺が忘れさせてやるよ」 「……うん」 抱き締めるようにキスをしながら、姫木も男に身を委ねて、その首に腕を回した。 二人はそのまま…… ダンッ! そこまで進んだ天王寺の妄想は、自らの手で終了となった。 机が真っ二つになるのではないかと思うほどの音がし、浅見の眼鏡がずれる。 「全部妄想だ、とにかく落ち着け尚人」 自分の想像に怒り爆発の天王寺に、浅見は冷静になれと落ち着かせる。 しかし、危険な恋に完全に浸かってしまった天王寺には、もう声は届かず。 「妄想ではない! 昔の恋が戻ったらどうするつもりなのだ」 「だから落ち着けと言っている」 「姫を奪われるやもしれぬのだぞ」 ギシギシと木のしなる音が……。 「安心しろ、姫木の過去に恋人はいない」 水月から姫木に恋人がいた話は聞いていない浅見は、それを天王寺に伝える。 よって、昔の恋などでてくるはずはないと。 本当にただの友達だと告げる。 「それは誠か」 「ああ、お前が初めての恋人だ」 だから安心しろと、背中を押したつもりだったのだが、天王寺の表情は険しいまま。 もっと危険な妄想へ。
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