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【妄想その2】
「やめろよ……」
両腕と両足を取り押さえられた姫木は、必死にもがく。
「しばらく見ないうちに、随分可愛くなったよな」
「いいじゃん、少し遊んでよ」
「よくしてやるよ」
口角を厭らしく上げた三人は、姫木の服に手をかける。
「嫌だ、やめろっ!」
服を捲られ、姫木が暴れると拘束は強くなった。
「大人しくしてれば、気持ちよくしてやるって」
「なあ姫木、お前もいい方がいいだろう」
そう言いながら、男たちは姫木の腕を縛り、抵抗できないようにした。
「解けよ! こんなのヤダ……」
腕を縛られ、両足を抑えされた姫木は、涙目で訴えるが男たちは、嬉しそうに唇を下品に舐める。
そして、姫木の服は引き裂かれ、
「嫌だっ! ……天王寺、天王寺ぃぃぃ!」
泣きながら天王寺の名を呼んだ。
ゾクリ
とんでもない妄想を繰り広げた天王寺は、自分の想像に背中が凍りついた。
自分の名を泣きながら呼んでいるというのに、助けに行けない。
それ以前に、そのようなことになっているとも知らない。自分の無力さに腹が立ち、姫木が傷つくことにも腹が立ち、天王寺は机にあったペンを真っ二つに折った。
「……尚人」
まさか、妄想がそこまで広がっているとは知らず、浅見は息を飲むように呼んでみる。
浅見に声をかけられ、ようやく現実にもどってきた天王寺は、じっと浅見を見つめ、
「私はどのようにすればよい」
回答を求めてきた。
正論から言えば、同窓会くらい何も問題ないと答えるべきだが、今、この場ですべき回答ではなく、浅見は回答に困り、悩んでしまった。
「やはり、天王寺家に監禁するしかあるまい」
何も返してこない浅見を見ながら、天王寺はさらりと犯罪を口にする。
「ダメだ」
「なにゆえに駄目と申すのだ」
それはお前を犯罪者にしたくないからだと、言ってやりたかったが、ひとまず浅見は耐える。
姫木を誘拐、監禁するなど、確実に犯罪だ。しかも、同窓会に参加すると言ってあれば、姿を見せない姫木に連絡を取る→連絡がとれない→何かあったと事件になる→拉致監禁が発覚する。
それだけは避けなければいけないと、浅見は深い深いため息を吐き出した。
「店は分かっているのか?」
「聞いておる」
「ならば、話は簡単だ」
眼鏡の位置を正し、浅見は店に潜入すると告げる。
姫木に何かあるのならば、すぐに助けに行けるように側で見守ると提案した。
「それは名案である」
浅見の提案に快くした天王寺は、姫木の同窓会なる集まりに、内緒で参加することを承諾。
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