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かくして、巻き込まれた浅見は、天王寺をどうしたら普通に見えるようにするか、店内で姫木に見つからないようにするにはどうすべきか、考えることが多過ぎて、頭痛が。
だが、天王寺はこれで姫木を守れると機嫌がよい。
そんな天王寺を横目に見ながら、浅見はひとり、ただならぬ心配と不安を呼び起こす。
(こいつから姫木を取ったら、本当にどうなるんだ)
代々浅見家は、天王寺家の秘書として仕えてきた。
つまり、浅見はこのまま尚人の秘書となるべく、卒業したら実家に戻り秘書としての業務を覚え、尚人は経営などを学ぶためしばらく離れることになるだろうが、その間姫木のことはどうなるのか?
勿論、傍におければ何も問題はないだろうが、姫木はその頃、まだ学生だ。
未来のことを考えて、浅見の頭痛は酷くなる。
それにこの事は、浅見の予想を大きく裏切っていた。
天王寺の恋は、すぐに冷めると簡単に考えていたからだ。相手は男、しかも姫木に暴言の数々を浴びせられ、疎まれ、嫌われていた……、これを踏まえて長続きなどするはずもないと。
何かの間違いで、勘違いの恋だろうと、初めは安易に考えていたが、天王寺の恋心は冷めるどころか、燃えるばかり。
本気で恋に落ちたと認めざる得ない証拠に、殆どなかった感情が豊かになりすぎた。
以前よりは何を考えているのか分かるようになり、人間味もでたが、姫木に関してストレート過ぎる感情は、時に抑えきれないと、浅見は深く息を吐く。
いっそ、姫木が大人しく尚人の元へ嫁にいけば、万事解決なんだろうかとさえ、真剣に考える始末。
そんな余計な心配事が増えるなか、天王寺は楽しげにパソコンを見ながら、カチカチと何かをクリック。
「尚人、何してるんだ」
不可解な行動に、浅見が再び覗き込めば、帽子やサングラスを物色中。
「変装道具を探しておる」
姫木の同窓会に変装して行くと言った浅見の言葉に、天王寺は素直に変装道具を探していたのだ。
「これは絶対にダメだ」
「顔が全て隠せる優れものではないか」
「……通報されるぞ」
カートに入れられていたのは、目出し帽。
なぜか一般常識がズレてしまっている天王寺は、本気でこれで行くつもりだった。
浅見は、放り込まれていたカートの中身を空にして、自分に任せておけと、天王寺が変装できそうなものを物色し始めた。
内心では、なんで俺まで巻き込まれるんだと、深すぎるため息をこぼして。
◆◆おまけ、おしまい◆◆
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