1.音声対応の生成AI

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 実はこの「ノヴァAIボイス」、何度も使いこなしているうちに、質問の答えの前にこのような会話を時々挟むようになり、利用者を楽しませたり、和ませたりしてくれる。  今回、部活が終わって下校の途中であると生成AIが推測して語りかけているのは、光理の位置情報、曜日と時刻、彼女がA女子高のバレー部員であるという情報を基にしているから。  なお、生成AIが利用する個人情報――彼女の容姿、性格、嗜好を含む――は、過去の問い合わせ内容だけではなく、彼女がSNSなどでネットに発信する情報、企業などに登録されている利用可能な個人情報から入念に抽出されている。A女子高のバレー部の活動スケジュールまで把握されているので、ある意味、ダダ漏れだ。 『今日の夕食だけど』 「――――」 『ビーフカレーでどうかな?』  ほんの少しの間合いを挟んで、生成AIが、今考え付いたかのように提案するが、実際は、質問と同時に複数の候補案を用意している。  質問者の反応から、提案を小出しにするのは、いつものやり方だ。 「――それでお願い」『あるいは』  光理の同意がちょっと遅かったので、アプリが生成AIの次の提案を音声とテキストで伝え始めたが、同意の声に反応して、テキストの「あるいは」が、バックスペースで消えるかのような動作で画面から消えていく。 『いつものように、二人前?』 「うん」 『それなら、Fスーパーがタイムサービスをやっている。ギリギリ998円で一揃い買えるが、前回買ったカレーのルーは、使い切ったかな?』 「まだある」 『何人前?』 「……たぶん、四人前」 『なら、328円カットできる。その分を肉のグレードアップに回して、一揃え955円にも出来るが、どうする?』 「グレードアップでお願い」 『了解。これがリストだ。読み上げるかい?』 「リストはテキストオンリーで」  すると、アプリの音声は停止し、食材のリストが画面に表示された。  光理は、テキストをコピーしてメモアプリに貼り付け、Fスーパーへ急いだ。
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