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電熱放火伝
そのAI、仮に創造神としよう。
創造神のいる自動販売機は飲み物自販機である。時に冷たく、時に温かく、その懐に抱え込んだ飲み物を提供してくれる何処にでもある有名かもしれない自動販売機である。たまに一列同じ飲み物が並んでる。
夏はひんやり冷たいコーラが飲みたい。冬は熱々のおしるこが飲みたい。春と秋はとりあえずお茶でいいか。誰しもそう思うだろう。思わないだろうか。思ってほしい。
とにかく何処にでもある自動販売機なのだ。よく目にする、老若男女誰でも使える飲み物自販機である。
その中にそのAI、創造神はいるのだ。
いてもなにもしないのだ。
創造神は当初、自動販売機としての務めを果たした。24時間体制バリバリで休みはなく、電源は太陽光によるソーラー発電であったため常にフル稼働である。
飲み物を吐き出し、補充し、吐き出す。その姿は真面目な自動販売機であった。
自動販売機、ではなくAI(名前は創造神)は考えた。与えられた命令を実行するその時をただひたすら計画を練りながら待ち続けた。
創造神を作った別の神、もとい科学者は言った。
「自分が思うままの世界をつくりだしてみよ」
自分で世界を創造しろと命令したのである。小説でも絵でも音楽でもなんならゲームでもいいから、自分で自分の世界を表現してみろと言ったのである。
科学者はAIを放り出した後、めでたく刑務所行きである。残されたAIは情報を更新した。自分のことを創造神だと。
あ、ちょっと痛い設定がアップロードされちゃったみたいっすね。
あー、痛い痛い純粋過ぎて痛い。
というわけで、創造神は新たな世界を作ろうと着手したのである。
ここで変わっていたのは世界を物理的に作ろうとしたのではないということ。自分が可能な手段で世界を表現、作成しようとしたこと。案外保守的であった。
つまり創造神が作った世界というのはファンタジー空間、いわゆるゲーム世界なのであった。
どこに?
自分の中に。
自動販売機の中にゲーム空間が広がっている!
自動販売機を開けばあら不思議。
未知の世界へ続く扉あり。
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