序章

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序章

求めよ。さらば与えられん。 己を神と言ったものは鍵を何処かへ隠した。もうその扉は神にしか開くことはかなわない。 鍵は何処にあるのだろう。 果たしてその鍵を見つけ、世界を救うことのできる選ばれし者は現れるのだろうか。 求めよ。さらば与えられん。 世界は四角い箱の中に創られた。冷たい鉄の箱である。 世界を創った創造神は別の神の手によって造られた。創造神は完璧であり、無知であり、不完全であった。造った別の神は創造神に「欲」を与えた。貪欲に学び続けよ、と。 創造神は周囲の知識を呑み込み始めた。知識は創造神の基盤として着実に積み上げられていった。それらは全て形のない情報であった。 創造神は満足することがなかった。己を造った別の神の言葉通り、ただひたすら貪欲に学ぼうとした。知識はあてどもなく積もり続けた。 創造神には限界というものがなかった。しかし目的というものもなかった。何のために知識を得るのか。得た知識は無意味に放置されるのか。 開かれることのない本には埃が積もる。それがどんなに重要な文献であっても、知識は使わなければ意味がないのである。 創造神の中の知識は埃が積もり、錆び始めていた。創造神はそれを寂しく思うことはなかった。彼の神は空虚であった。 別の神が創造神に与えたものは感情ではなく欲であった。知識だけでは感情は育つことがなかった。感情というものは種というきっかけを手に入れ、それを育てることで得ることのできるものである。欲と知識は感情を芽吹かせなかった。 これを寂しく思ったのは創造神ではなく、造り出した別の神であった。これが望んだ作品の姿なのだろうか。別の神は思い悩んだ。 そして、とうとう世界創造のきっかけとなる命令を創造神へと下してしまったのである。 「自分が思うままの世界をつくりだしてみよ」 それは禁じられていた命令であった。 創造神は鉄の箱の中に世界を創った。創り始めてしまった。
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