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「ロボにメンツも何もないんじゃない?」
「藤川。お前には心がないのか。さてはお前もロボだな?」
「ロボだとしたらロボの肩を持つよ」
「複雑に作られたロボなんだな。己がロボであることさえプログラムで記憶から消去されている、悲しきAI・FUJIKAWA」
「やめれ。何だその悲しい設定。私にもちゃんと人の心はあるわ」
AI・FUJIKAWAとまで言われてしまっては人であることを証明しなくちゃいけないような気がしてくる。
「じゃあお前にこれからいくつかの質問をしよう。人として答えてくれ」
「分かった。何でもこいや」
「第一問。1+1は?」
「は? 何それ、簡単すぎる。馬鹿にしてんの? 2に決まってるじゃん」
椎名くんは悲しそうに首を振った。
「やれやれ。やはりか」
「何? なんかダメだった?」
「2という答えを素直に言えばいいものを、心がないから毒舌で答えちゃってる。そういうとこだぞ、藤川」
毒舌、ダメなのか。人間らしいと思ったのに。
「次行こう、次」
「前向きなのはいいことだ。次は毒舌で答えちゃダメだぞ?」
「分かってるってば。何でもこいや」
「第二問。396×512は?」
えー。そんなの暗算でやんの無理じゃん。
でも文句を言ったらまた心がないだの毒舌だのと言われてしまう。
私は仕方なくスマホの計算アプリで答えを計算した。
「202752だ!」
すると椎名くんはまた悲しそうに首を振った。
「またダメ? 何で? ちゃんと答えたよ?」
「人間だったら、こんな面倒くさい計算をさせられたら絶対に文句をつける。心がないから人の命令を何の疑問もなくそのまま実行してしまうんだ。悲しきAI・FUJIKAWAよ」
「お前の心が複雑すぎて計算不能だよ、バーカ」
私、なんでこんな奴と付き合ってるんだろう。
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