椎名くんは受け取らない

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「なんか、もっと道徳的な質問してみたら? 人間らしい答えになるかも」 「そうだな。じゃあ──」  椎名くんは少し考えた。 「もしも藤川が沈没しそうな船に乗っていたとしよう。そこに、見るからに金を持っていそうな男が乗っている立派なボートと、板切れ一枚にしがみついているレオナルド=○ィカプリオが救助にやってきた。藤川はどっちを選ぶ?」 「椎名くん、さては最近金曜ロードショーでタイタニック観たな?」 「あれ、板切れに左右から同時に二人で乗ったらバランス取れてたんじゃね? って毎回思うよな」 「思う思う。そこは最後まで協力しようよって」 「いや、そんなことより質問の答えは?」  もう充分人間らしい雑談をしたのにな。椎名くんはまだ私をロボだと思っているのか。 「ん〜。まあ、普通に考えたらお金を持っていそうな男の方に行く方が安全だけど、それじゃあ合理的で心がないとかロボだとか言われそうだから、板切れの○ィカプリオの方にする」  椎名くんは悲しそうに首を振った。 「やれやれ。お前は心がないな、藤川」 「何で⁉︎」 「お前が板切れの方に乗ることによって○ィカプリオは沈んでしまう可能性が高くなる。それでも板切れに行くなんて、非人道的だろ。○ィカプリオを助けたいなら、まずボートの男を海へ突き飛ばし、○ィカプリオと二人でボートに乗るのが正解だ」  ボートの男を落とすのは非人道的じゃないのか。 「金持ち男には板切れに一人で乗ってもらえば全員助かる。全員助かる道を模索してこそAIだろ。FUJIKAWA」  本当に、どうしてこんな人と付き合ってるんだろう。私。
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