椎名くんは受け取らない

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 その時、ずっと迷っていた配膳ロボがやっと私たちのテーブルの前にやってきた。 「おお、ようやく来たか」  配膳ロボは褒めて褒めて! と言いたげにセンサーを光らせているけど、お皿の上のアイスは半分溶けてマーブル状になってしまっていた。 「あーあ。どうする? 藤川。お前の仲間の失態だぞ」 「仲間じゃないし。溶けてるのが嫌なら店員さん呼んで作り直してもらいなよ」  椎名くんは悲しそうに首を振った。 「やれやれ。お前は心がないな、藤川。そんなことをしたら、こいつのメンツが潰れてしまうだろう。まったく、アイスより冷たい女だな、AI・FUJIKAWAよ」  椎名くんはそう言って、配膳ロボの頭をヨシヨシと撫でた。   「お前は悪くない。よく頑張ったな」  配膳ロボに優しい笑顔を見せる椎名くん。  くそう。私には滅多に見せてくれない優しさを、他の物には惜しみなく与えるってどういうこと?  なんか悔しい。  すると、椎名くんのヨシヨシが配膳ロボのセンサーにピッと反応した。  配膳ロボはアイスの皿を持ったまま、配膳完了とばかりに厨房へ戻って行った。  無言でその丸い背中を見送った椎名くんの第一声は。 「ねえ、どこまでポンコツなのあの子? 可愛くない⁉︎」 「あんたがセンサーに触れたからでしょうが」  どうやら椎名くんはドジっ子なロボが好きらしいとAI・FUJIKAWAは学習した。  学習したところで、使い物にはならない知識だけど。
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