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結局、豪雪の影響で登園したさくら組の園児は四人だけだった。
4人じゃなにもできない。
そう考えた横山先生は午前中体育館にある百インチモニターで子供向け映画一本を子供たちに見せることにした。
「え、まさきくん、てんとう虫食べたの」
正樹と光は珍しくじゃれていた。
「うん、あれはチンミだな」
恐らく二人にとってこの半年で一番距離が近くなった時だろう。
お昼ご飯の後はお絵描きやおにごっこなど各自自由時間、三時になると幼稚園バスはでてなかっため、送り迎えによる帰宅となった。
その日以降、記録的大雪は続き、冬休みは一週間早く繰り上げらることとなった。
北海道の冬は長い。
冬の風情は彼らの思い出に色濃く残った。
クリスマスが過ぎ、お正月になると正樹の父、恭介は毎年一週間程の休みをとり、家に帰ってくる。
「大きくなったな」
恭介は一カ月ぶりに正樹を見て笑顔になる。
恭介は五年前思い切って建てた一軒家を見ると、なんとなくやる気がわいた。
「今年は酷い雪でしょ、駅からよく歩いてこれたね」
麻由花はこたつに座って正樹が幼稚園で描いた絵を見ている恭介にお茶をだした。
お正月というのは日本全国多くの人が安らぎを感じ、後悔や、やる気で様々な思いを持つことになる。
「今度はいつ帰ってくる」
帰って来たばかりの恭介に正樹は質問した。
「次は三月になるかな」
沼田町には海がない。そのため港がある海上保安庁の宿舎で暮らしていた。
六歳の正樹にとって父との別れは想像以上に悲しいものだった。
「今日お寿司食べに行く?」
麻由花は恭介の肩をもみながら訊いた。麻由花がハッキリとした性格になったのは恭介と結婚し、子供を産んでからだ。
八年前の冬、麻由花は恭介からでた突然の「結婚しよう」にはやはり迷いがあった。
海で船に乗ってる?
海上保安庁?
家にはあまり帰れない?
当時の恭介は海上保安庁とは言っても事務で働いていていたため、家には毎日帰り、彼女である麻由花とは毎週のようにデートをしていた。
しかし恭介は人事異動で春から海に出ることになった。
やはり麻由花の中で大きな不安があった。
それでも麻由花は恭介のことが好きで、恭介のことをこの世で一番信頼できると言えることから結婚することにした。
それから二年後、麻由花は正樹を出産、二人の間に命が宿った。
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