空白駅

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光も小学一年生になって一カ月も過ぎれば正樹のことはほぼ頭になかった。 光は親しき友も作り、決して独りではなかった。 小学三年生の時に一度だけ正樹のことをよく考えた時があった。 次の日の授業で使う絵具を探す為、部屋中の物をかき分けていると、一枚の絵がでてきた。絵はかなりしわくちゃになっており、裏には(ほしぞら幼稚園)と懐かしい名前が書かれていた。 それは年長の時に正樹と光が描いた絵だった。 まさき・・・ 正樹という名前に何か違和感を覚えた。一旦絵具探しを中断し、卒園アルバムを取り出した。 (さくら組・・・さくら組・・・) 懐かしい人ばかりだった。みんな純粋だった。それでも自分とはどこか合わない。そんなことを幼いながらに感じていた幼稚園時代。九歳となった今、さらに強くその思いは光に覆いかぶさった。 そして正樹の顔が視線に入ると少しだけゾクッとした。 蘇るあの時の記憶・・・ まるで自分のコピーを見てるかのような。 お父さんのような存在というのが正しいのかもしれない。 無論彼女に父はいなかった為、そんなことを彼女が思うはずがない。 それでも正樹の温もりを思い出した。 今の生活は私にはあってない。 その時光は独りじゃないはずなのに独りを存分に感じた。
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