空白駅

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自分を偽る。そんな小難しいことを小学三年生にできるはずがない。 彼女くらいの歳ならもっと自分を出し、受け入れてもらうのが普通だ。 光にはかなり早い段階で自我が芽生えていたのかもしれない。 「光ちゃん、おはよう」 朝学校に来てみると、後ろの席の子が優しく声をかけた。 自分を出せば、自分を出せばこんなこともなくなる。誰も私を気に掛けなくなる。 とてつもなく大きい不安が光の頭を過る。 正樹のことをまた朝の学校でふと考えてみる。 (正樹は自分のドッペルゲンガー) そんな結論に至りそうになるがもう手遅れだ。 彼が自分のコピーだからって何かが変わる訳ではない。 そして過去はどんどんと美化されていく。 もう彼には会えない。彼は昔の人だ。 彼女が最終的に至った結論は「仮面を被って七瀬光」 自分はいつも心に仮面を被せている。そう強く感じた。
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