線路上

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線路上

年長のさくら組にも慣れた五月ごろ、正樹と光は親友のようになっていた。 正樹は今まで女の子と仲良くしたことがなく、しゅんたろうなどノリがよく、うるさい子のほうが心地いいと思っていた。 幼い時に繊細だった子は大人になると汚れやすいなんてことをよく耳にするが、あれは本当なのか、はたまた幻覚のようなものなのか。 少なくとも正樹には当てはまらない気もするもんだ。 お昼ご飯の後、さくら組は粘土の時間だった。粘土の時間では横山先生が明日の持ち物等を手作業で25人分の連絡帳に記入していた。 「ひかりはさ、粘土食べたいって思ったことある?」 昔から粘土がガムに見えて仕方がない正樹は光に尋ねた。 「ないしょ」 光は粘土の匂いを少し嗅ぎ、間をあけてから言った。 光もこのごろになると正樹のことはお気に入りだった。光が静かにしていても、正樹は空気を読めるところ、光の心の中を探らないとこ・・・  彼女の心には正樹のような人が必要だったのかもしれない。 この二人はいつまでも仲が良い。そんな思いも理不尽に何が起こるかわからないこの歳では儚い想像なのかもしれない。
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