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五月というのは特にぱっとしない月だ。
六月になると正樹と光はあまり話さなくなってしまった。六月にはいわゆる席替えが行われ、正樹はホワイトボードに一番近い席に、光は後ろの窓際になり、二人は自由時間でも遊んだりすることは自然に減ってしまった。
正樹の中に寂しいという気持ちはなかった。正樹は光のことをあまり考えてはいなかったが、おそらく無意識では、遊ぼうと思えばいつでも遊べる。そんな感じだろう。
彼は寂しいや嫉妬という気持ちをまだ知らない。
夏といえば恋の季節と言われるが、この愛のない二人の恋にとっては冬になってしまっていた。
7月後半になり、夏休みが始まろうとしていた。
「はい!みんな!二人一組になって海を書いてみましょう」
横山先生の・・・定番のうるさくない大声が教室に響いた。本州の人にとっては暑くない夏なのかもしれないが、いつの間にか教室は四月に比べ夏色に染まっていた。
揺れる風鈴、セミのまだ小さな鳴き声、園庭に咲く向日葵・・・
こんな濃いはずの夏色はいつも気づかない内にやってくる。
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