線路上

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「さあ!みんなパートナーを見つけて」 横山先生は手を叩いて園児たちに促した。   「どしよ」 正樹は誰にも聞こえない小さな独り言を言った。 頼みの綱であったしゅんたろうが何故か先生をパートナーとして選んでしまったからだ。 「まさきくん、やろ」 光は仲のいいはずの女の子たちではなく、正樹を選んだ。 この種のものは幼児しか持ってない気まぐれってやつだ。 「やろやろ」 正樹は本心、飛び上がるほど喜んでいたが、この歳で感情をあまりださない彼は光の唯一のお気に入りと言われてもおかしくないだろう。 「海だって!何描く?」 「海行ったことある?」 「サメでも描こうか」 正樹は光の前では人見知りを忘れる。 「この辺は田んぼが多くて海とか見たことないな」 「ホロピリのこと海だと思ってた」 光は正樹とは反対に静かに返す。 ホロピリとはホロピリ湖のことで、沼田町の観光名所でもあった。 「海ってね、魚を獲るところだよ」 正樹にとって海は泳ぐところではないらしい。 「うちのパパね、海のわんこだから」 正樹の父は彼がわんこと例えたが、海上保安庁で働いていた。 「おくちチャックして、とりあえず魚とまさきくんの犬のパパ?描こう」 光は大人な対応を見せた。
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