魔女の惚れ薬

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私は魔女です。うぇーい! 嘘です。 本当は私のおばあちゃんが魔女です。 だから私は、魔女の孫です。いぇーい! 最近好きな男の子ができました。 転校生のシメイ君です。 名前なのにシメイ(氏名)って面白いですよね。 他の男の子は猿ですが、シメイ君はかっこいいですし、面白いです。 人生って不平等ですね。( ^∀^) シメイ君のハートを射止めるために色々やりました。 嘘です。できませんでした。 1円よりも安い「おはよう」は、誰にでも簡単に言えるのに。 シメイ君の前では、それさえも言えませんでした。 だから、なにもできませんでした。 ぴえん。 でも私には、魔女がついています。 おばあちゃんに相談すると、ニコニコ顔で「任せなさい」と言ってくれました。 大好きなおばあちゃんのことが、もっと好きになりました。 おばあちゃんはお薬を作ってくれました。 びやく、というお薬らしいです。 これを飲むと、相手は自分のことを好きになってくれる。 そんなお薬らしいです。すごーい! でも、それをもらって、少し考えました。 本当にこれで、いいのかな? おばあちゃんに相談すると。 「目的のために手段を選んでいては、いけないよ。  それともうひとつ。  手段のために目的を選んでいても、いけないよ」 と教えてくれました。 ちょっと何を言っているのかわかりませんでした。 でも「レッツ ドゥー イット☆」ってことはわかりました。 普通は止める流れだと思っていたので、おばあちゃんのノリノリ加減が、ちょっと意外でした。 私はおばあちゃんのことがもっと好きになりました。 でも、問題があります。 おはようさえ言えない私にお薬を渡すことなんてできません。 困りました。 でもやっぱりおばあちゃんです。 すぐにアイディアを出してくれました。 「そんな時はね、なにも考えずに、当たって砕けなさい」 「当たって、砕けるって、どうしたらいいの?」 「当たるのよ、物理的にね」 わーお! なんてアドバイスだ! おばあちゃんが言うには、ぶつかると「ごめんなさい」の一言から会話ができるらしいです。 それに男の子は女の子に怪我をさせることは、とても悪いことだと思っているので、心理的に優位に立てるらしいです。 マジか。 さすがおばあちゃん! 早速やってみました。 目標をセンターに入れたら、すぐに目をつむってダッシュ! 作戦は見事に成功して、私はシメイ君とお話ができました。 そうして、お薬がはいったクッキーを渡し食べてもらうことにも成功しました。てきてき素敵! でも。 よかったのはここまででした。 お薬入りのクッキーを食べたシメイ君は恋に落ちました。 私にではなく、お薬を作ったおばあちゃんに、です。 これはきっと、罰です。 ズルをしたから、その報いです。 私は、後悔をして泣きました。ぴえん。 ぴえん、ぴえん。
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