貴女と僕の傷跡

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「か、カッコいい…?美結…待てよ…そんな事ない。俺…コンプレックスなんだよ…鼻声でさ…モゴモゴしててさ…」 「ウッ…ううん?…たける様の声だなって…たける様ってこんな声なんだって…ホントにホントに想像してた声だなって…カッコいい…ホントにカッコいい声…」 「そ、そうな…の…か…あ、ありがとう…」 いや、あんまり褒められ慣れてねぇ人生を歩んでっといざ褒められるとなんて言っていいか分かんねぇよな。 な? そして美結は私が考えていた事を泣きながらも、サラリと言ってのけた。 さすが美結!俺にできない事を平然とやってのける そこにシビれるa…(略) 「たける様…好き…。たける様にコレ言いたかったの…。大好き…。たとえたける様がどんな見た目でも…あたし絶対に好きになれる…絶対…絶対に…。」 どこまでも先をいく女子高生、美結。 齢十五、六でこの手練れ…私は恋愛弱者とはいえこの時既に二十歳、成人ぞ? 美結…貴様…一体何者だ…? 強がった事を書いたが、もうコレより前に私は美結に文だけで骨抜きにされていたのだ。だがこの状況は、私が述べた恋愛戦略通りなわけだから、美結の思いを受け止めようとも断ろうとも、私は無傷。 美結の生殺与奪は我が手にあり。 あ、皆さんドン引きっスか? さーせん。 そう、生殺与奪は我が手にあり。 クククッ…さぁ…美結とやら。 どう料理してくれようk… 「美結…俺も…俺も好きだ…俺も…俺もだ…」 ヽ(・ω・)/ズコー 皆さん、椅子から転がり落ちる瞬間ですよ?空気読んで下さい? 話を戻す。 「たける様ぁ…嬉しい…」 「俺も…嬉しいよ…。」 … 私はこの時思った。 素直に嬉しい。 これほど感情剥き出しで思いを告げられた事など無かった。 情熱的に思いを告げられたのは初めてだった。 だが…美結は言った。 私の見た目がどうであれ、絶対に好きになると。 ほぅ…本当だろうか? 貴様は花も恥じらう女子高生。 二十歳の私は、第六十代横綱 双羽黒こと、北尾光司そっくり(笑) あ、いや、マジで自他共認めるくらい私の若い頃は北尾光司です(笑) どうだい?お嬢ちゃん…。 北尾光司の隣に笑顔で佇む事はできるかい?できねぇよな? だからよ、美結よ。 このまま…甘酸っぱい思い出として胸にしまっておけ。 忘れるんだ。 忘れてく… 「たける様の顔見たい!!もっとたける様の事知りたい!!で、もっと好きになりたいの!!たける様お願い!!」 若さ故ですかね。 二十歳という年齢でありながらすでに女子高生のスピード感についていけていない。 「顔って…。どうすればいいんだ…?そりゃ俺も美結の顔みたいし、もっと美結の事知りたいけど…。」 そう、今の感覚だと信じられないだろう。 スマートフォンでパシャリ、無料通話アプリでポチっと送信なんてできない時代だ。 「写メ」なんて言葉もこの時は無い。 若ぇ衆、信じられるかい? 「たける様、今書くのある?」 急に焦った声色に変わった美結が言った。 「え?あ、あぁ…今アパートの部屋だから…書くのくらいなんぼでも…。」 「住所言うから。たける様の写真…送って?あたしも送る。」 マジすか?ホントすか? でも美結の声は恐ろしいほどの熱量を含んでいる。 マジなんだろう。 そして次の瞬間、私は色々意味で驚愕の事実を知ることになる。
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