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ある人工知能チャットボットが開発、発表された。 その名は『名探偵AI』 どんな難解な事件や迷宮入りしそうな事件の犯人やトリックを言い当てる人工知能チャットボット。 警視庁の刑事が今日もまた、この名探偵AIに事件解決のためにチャットをする。 『こんにちは、名探偵AIです。あなたのお悩みをお聞かせください。』 画面に表示されたメッセージに、私は返信した。 「今、ある不可解な事件に取り組んでいるのですが、どうしても解決できません。あなたの力を借りたい」 『もちろんです。事件の概要と被害者の情報を教えてください。』 「先週の日曜日、東京都内のマンションで、村川タダシという男性が死亡しているのが発見されました。死因は窒息死で、遺体には外傷や毒物の痕跡はなかったです。部屋は鍵がかかっており、窓も閉められていました。いわゆる密室状態で、物などが無くなっているものはなかったです」 『被害者はどんな人物でしたか?』 「村川タダシは35歳の会社員。妻と子供が一人いますが、単身赴任中で、事件があった部屋で一人暮らしをしていました。趣味はネットサーフィンやゲームなどで、特に目立ったトラブルや敵対者はいないようです」 『なるほど。では、貴方は犯人は誰だと思いますか?』 『この事件に関係しそうな人物や身辺人物を調べてみましたが、誰もアリバイがあり犯人が分かりません」 『そうですか。では、私が推理してみましょう。』 名探偵AIは、しばらく沈黙した後、再びメッセージを送ってきた。 『質問があります。被害者の部屋には何か変わったものはありませんでしたか?』 「変わったものと言えば‥‥机の上に睡眠薬がありました。亡くなった当日にも睡眠薬を服用していた形跡がありました。あと気になると言えば、被害者のスマートフォンなんですが、電源が切られており、パスコードを入力しないと操作できないものですが、そのパスコードは被害者の妻が思い当たるパスコードを入力してもロックを解除出来なかったと言っています。まあ、パスコードなんていくらでも変えられるものですから、そこまで‥‥」 『そのスマートフォンは被害者のものですか?』 「そうだと思います。被害者の指紋が検出されましたし、家族や友人にも確認しましたが、彼のものだったと言っています。」 『なるほど、ありがとうございます。これで推理が完了しました。犯人とトリックをお伝えします。』 「え? それだけの情報で!?」 と驚く間もなく、メッセージを送ってきた。
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