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マーガレット魔法学校
メイサはおばあちゃまが魔法薬を作る名人の家系。
魔法学校に入る直前まで、自分が魔女だとは気づかなかった女の子だ。
メイサはマーガレット魔法学校に入学した。
入学する前におばあちゃまのおうちにいる時に、魔女の力に目覚めたばかりのおとなしい女の子だ。
メイサは魔法学校に入る前におばあちゃまの魔法薬に使う草花の生えている素敵なお庭で教科書を見ながら一つのお薬を完成させていた。
おばあちゃまは、メイサの初めての魔法薬を見ながら味を見て褒めてくれた。
そして、魔法薬を冷ます魔法をかけると小さな瓶に詰めてくれた。
出来上がった魔法薬は、とてもかわいいい不思議に光るピンク色の液体だった。
そうして、こういってそのお薬を持たせてくれた。
「これは、学校に行く時に持っていきなさい。」
「おなかが少し痛いとか、頭が少し痛いとか、指に小さなやけどをしたとか、そういう簡単なケガや病気の時に飲んだりつけたりすると治るからね。」
メイサはこのお薬をとても大切に持って、自分の机の鍵のかかる引き出しに入れていた。
呪文の授業で緊張して、少し頭が痛くなってしまった時に少し飲んだ。
魔法薬の授業でちょっと薬が爆発してしまって、小さなやけどをした時には少しだけ傷に塗った。
そのうち、段々このかわいいピンク色のお薬も少なくなってきたころに、授業でもこの薬をつくる順番が回って来た。
この薬の名前は『小さな万能薬』。他の魔法薬では結構カエルの足とか、乾燥したトカゲのしっぽとか、動物の体の一部を入れるものが結構多かったのだが、この薬は魔法薬では珍しく薬草を乾燥させたものやドライフラワーを使って丁寧に調合することで出来上がる。
これまでの魔法薬の様にカエルの足が少し大きくても小さくても同じ薬が出来ていたのだが、『小さな万能薬』は乾燥した草や花の量を間違えずにきっちりと図らないと出来上がらない。
一年生の魔女にしては少し高度なお薬なのだ。
これまでの授業では、おとなしく、まだあまりお友達もできいていなかったメイサは、『小さな万能薬』は一度成功しているし、自信をもって作っていった。
お水、乾燥した草や花の量をきっちり計って、たとえ草が一本でも入れる順番をきちんと守って作っていく。
クラスの中には仲良しグループでキャッキャと騒ぎながら『小さな万能薬』を作っているグループもあった。
乾燥させた草や花なので、あまり危険もないと思っているのだろう。適当にポイポイとお鍋に入れている。
メイサは賑やかなグループを横目で見ながら、ちょっと心配もしていた。
『大丈夫かしら?あんなに適当に入れても。爆発しないかしら。』
さぁ、煮込む時間もきっちり計って、メイサは先生に薬を見てもらった。
先生はじっくりと味を見て、鍋の中の薬の色を見た。
「うん。よろしい。メイサ、よくできましたね。あぁ、あなた入学するときにもこのお薬持ってきていたわね。あれはおばあさまが作ってくださったの?」
「いいえ、先生。おばあさまが見ていてくださったので、教科書を見て自分で作りました。」
「そう。自分で作れていたのね。でも、今回はおばあ様もいなかったのによく集中して作りましたね。草花を使った魔法薬は微調整が大切なのよ。あなたのおばあさまは魔法界でも有数の魔法薬の名人ですからね。それも草花を使っているので人間からも注文が来る。マーガレット魔法学校としても鼻が高いのですよ。」
「ありがとうございます。先生。」
メイサは大好きなおばあさまを先生に褒められて嬉しくなった。
「メイサ、後は薬が覚めたら瓶に詰めてね。今日の魔法薬の授業、あなたは満点ですね。」
そうして、先生は賑やかに薬を作っていたグループのお魔法薬を見に行った。
「ちょ、ちょっとあなたたち。これはいったい何です?」
「先生、教科書通りのものを入れたんですよ。」
「順番や量は?きちんと教科書通りだったかしら?」
おまけにそのグループの中の子は途中で薬が跳ねて少し火傷をしたからと、今日作っていた薬をその火傷に少し縫ってみたりしていたのだった。
その子の腕は少しの火傷だったはずなのに、なんだか緑色のぶくぶくした水ぶくれが広がってきて、すごい臭いがしていた。
「出来上がったかどうか、私が確認もしないうちに薬を塗ったの?まぁ!なんてことでしょう。早く保健室に行っていらっしゃい。保健室の先生でなければ治せませんよ。」
そのグループの薬の鍋は濃い赤い色になって、まるで血の海のようだった。
「この魔法薬は魔女としての集中力が必要なのですよ。」
「メイサをごらんなさい。綺麗なピンクの薬が出来ているでしょう?ほら、そこのあなた。あなたも少し火傷をしているわね。メイサにお薬を少し分けてもらって塗ってごらんなさい。」
いつも騒がしいグループのリーダー格のラーナがメイサの元にトボトボとやって来た。
「あの、お薬分けてもらえる?」
「えぇ、もちろん。腕を出して。塗ってあげる。」
メイサがピンクに輝く薬をほんの少し薄く塗っただけでラーナの腕の火傷は何事もなかったように治ってしまった。
「ありがとう。メイサ。もしよかったら、この薬の作り方のコツ教えてくれる?」
ラーナは居残りを命じられたグループの仲間と共に、メイサに薬を作るコツを聞きながら、今度はそれは静かにそれぞれ一人ずつで鍋に薬を作り始めた。
静かな時間が流れ、やがて、ポコポコと優しい輝くピンク色の薬がみんなの鍋で出来上がり始めた。
時間を見計らって教室に来た先生は一人一人の鍋を確認して
「みなさん、よくできました。お友達と楽しくするのも良いけれど、時には集中して、一人で作業することも魔女には大切な事なのですよ。」
と、静かに言った。
この授業をきっかけに、メイサはラーナと仲良くなれた。そのおかげでラーナのグループのみんなとも仲良くなれた。
みんな、不思議に輝くピンクの薬の瓶を自分の部屋の机の上に出しておくようになった。
これで、ちょっとした頭痛や、のどの痛み、擦り傷や小さなやけどなどは自分たちで治すことができる。
メイサも、もう、皆がお薬を持っているので、安心して机の上に『小さな万能薬』を出して置けるようになった。
今回つくった小さな万能薬は友情にも良く効く薬だったようだ。
【了】
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