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『あなたの一番星になりたいんです』
人気アニメの主人公や、ヒーロー戦隊のレッドのような輝きを放つ男が真っ直ぐ手を伸ばす。スワロフスキーが散りばめられた豪華な衣装を纏いながら、その壮麗な輝きに見合わないほどの汗を流して。
それは、当時のORIONの誇る国民的アイドルグループがステージ挨拶をしている映像だった。
正面のカメラに向かって涙ぐみながら真摯に発せられた言葉は、まるで画面を通して自分に語り掛けてくれているように感じた。
意思を持って力が込められた指先がピンとこちらを差して、再び『あなた』と問いかける。
類人はリモコンを持ったまま動けなくなった。
──初めて、誰かに見つけて貰えた。
気のせいかもしれない。自意識過剰なだけの恥ずかしい奴かもしれない。
だけど、画面の向こう側にいる彼は本気で指を差している。『あなた』だと。『あなたの一番星になりたい』と。
そんな風に類人へ語りかけてくれる人は、今まで誰もいなかった。
リモコンを持つ手に力がこもる。胸が苦しい。こんなにも心を揺さぶられたのは初めてだ。
時を忘れて呆然と立ち尽くす。どれくらいそうしていたのだろう。いつの間にかエンタメニュースは地方のグルメ紹介に切り替わっていた。
花屋を閉めて二階の自宅に上がってきた母親が、リモコンを握り締め直立不動で涙と鼻水をボタボタと零す息子を見てギョッとした。流しっぱなしのテレビでは漁師メシを頬張る芸人がおもしろ食レポをしている。何が起きているのか、状況が全くわからない。
そして普段から大人しく滅多に我儘を言わない息子が「お母さん、CDがほしい」と唐突に言い出したので、母親は二つ返事で即日CDショップへ連れて行ったのだった。
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