Track 3. 一等星

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 その日から、類人の人生は一変した。  まず、人目を気にして伸ばしていた前髪を切った。目にかかるほどの前髪が邪魔で大好きな彼の姿がよく見えなかったからだ。  たくさん食べる子が好きだと語るのを雑誌で見てからは、それまで残し気味だったご飯をお代わりするようになった。  新しくリリースされたCDの話をしていた同じクラスの女子に勇気を出して「僕も買ったよ」と話しかけたら、それまでの苦労が嘘のようにあっという間に話の輪に入ることができた。  誰かの食べカスのようにみすぼらしいものになっていた類人の自己肯定感が、憧れのアイドルを追うごとに息を吹き返していく。  周囲と人間関係が芽生え、新しい物事に興味を持つようになり、自分が生きていると実感する。  あの日偶然見つけた星を道標に歩き始めた類人は、初めて世界に色が着いて見えたのだ。そしていつの日かこう思い始める。  ――自分も、寂しい思いをしている誰かを導く星になりたい。夜空を見上げたら必ずそこにあるシリウスのように、光り輝く一等星になりたい。
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