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「……一つ聞いてもいいかな」
社長室のデスクチェアに座る百合子の傍に立っていたルナールへ、類人が問いかけた。
心配そうに見つめる多嘉司に「大丈夫」と目線だけで返し、美貌の新人を見据える。彼は少し声を弾ませて「何です?」と嬉しそうに聞き返した。
「君ならソロでも十分にやっていける。なのに俺と組むメリットは何?」
デスクの上に広げられたタレントリストを見るに、百合子もルナールに見合う最高の人材をピックアップしていたはずだ。マネジメントにおいて彼女の右に出る者はいない。
それがルナールの我儘とも言える鶴の一声で類人が選ばれた。引き立て役が欲しいだけなら誰だっていいはずなのに。だから、ちゃんとした理由が知りたい。
類人の直球な問いに、作り物めいたマリンブルーの瞳が大きく見開かれる。
一拍おいて、ルナールはアメリカ仕込みのオーバーリアクションで手を叩いて笑った。
「あっはっはっ! メリット!? そんなの考えてもみなかった!」
天真爛漫なその反応に、様子を見守っていた多嘉司の方が焦れてしまった。
パリッとしたスーツの肩を震わせて、陽気なルナールを鋭く睨みつける。
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