Track 3. 一等星

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「類人さんのそばにあなたみたいな人がいて、よかった」 「どういう意味だ?」 「そのままの意味。だって類人さんがこれだけ長いあいだ頑張ってこれたのはファンの力だけじゃないと思うし。あなたがそばで支えてくれたおかげで僕は今も最高の推し活ができてる。本当にありがとう」  ルナールはジーンズのポケットからスマホを取り出し、画像フォルダの画面を二人に見せた。  そこにずらりと並んでいたのは、類人のSNSのスクショや限定配信の待ち受け画像。それに年に1回発売されるファングッズとのツーショット、山積みになったアイドル誌等々。  類人一色で染め上げられた謎に圧のある画面は何度スワイプしても延々と続いている。戦々恐々としていた二人は一気に目を丸くした。 「類人さんは、僕の一番星なんだ」  ルナールは嫌味なほど美しく笑い、そして幸せそうに目を細める。  百合子が発掘した時価3000億円の原石の最推しは、どういうルートを辿れば行き着くのかとことん謎を極めたが、入所十一年目、特筆すべき活躍もなければスキャンダルも特になし。歌も容姿も平凡で突出した個性が見当たらない無個性の極み。アイドルとしては致命的だが努力の量だけは誰にも負けない四ノ宮類人二十一歳なのであった。
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