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Track 4. シンメトリー
結果的に、類人はルナールから差し出された手を取った。
例え自分が思い描いていたアイドルになれないとしても、何より優先すべきはデビューだと考えたからだ。
年齢的にも、きっと最後のチャンスになる。どんなに不当な扱いを受けようと、その先が夢に繋がっていればそれでいい。
そんな覚悟で手を握る類人にルナールは年相応に笑って「じゃあ、衣食住のお世話もよろしくね」と爆弾を落とし、きらりと光るブラックカードを差し出した。
高校生の妹は突然一つ屋根の下で暮らし始めたのハーフ美男子に「これが少女漫画なら確実にあたしがヒロインね」と、初日からメロっていた。だが当の本人は推ししか眼中にないようで「鼻の形が類人さんに似てるね!」と笑顔で恋愛フラグを圧し折ったのも、今では懐かしい。
ちなみに生活費として渡されたブラックカードは使うには恐ろしすぎて、丁重にお返しした。そのせいで大したもてなしはできていないが、
「これが類人さんが育った家!」
「これ! 雑誌で言ってた類人さんとお父さんが大喧嘩した時にできた壁のへこみ!」
「どっひゃ~! このオフショットって類人さんが同期と組んだ幻の異端児ユニット、『☆男組』じゃん!」
など、一人で大変盛り上がりだったので、とりあえず問題はないらしい。
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