Track 4. シンメトリー

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 類人と同じようにデビューを目指して研鑽を重ねる若いタレントたちは、自らの才能で燦々(さんさん)と輝くルナールを見て目を細める。  厳しいオーディションやスカウトで所属すること自体がステータスと言われるORION(オリオン)だが、入所はあくまでスタート地点。優れた容姿も実力も才能も、レッスン室を見渡せばいくらでも転がっている。  一方で、下手を愛そうとするのは日本独特の文化の一つだ。出来の悪い子ほど可愛いとはよく言ったもので、生まれ持った資質の足りない部分を努力で補う少年たちを、ファンはよく愛してくれた。だから彼らは努力を惜しまない。  だが世界へ目を向けるとどうだろう。  日本の音楽チャートには海外のハイレベルなパフォーマンスが台頭し、ユーザーの目は肥える一方だ。ORION(オリオン)のアイドル一強だった音楽市場の構図は徐々に塗り替えられつつある。それに対応していく必要があると百合子社長は考えたのかもしれない。そんな噂が事務所内を駆け巡った。  これからORION(オリオン)の歴史が変わる。デビュー前の若いタレントを大勢抱えたORION(オリオン)に、才能が努力を淘汰する新しい時代が来る。  それを席捲する一等星(シリウス)がルナールであることは、誰が見ても明らかだった。
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