25人が本棚に入れています
本棚に追加
そして類人にも新時代の波が否応なしに打ち寄せている。
ルナールと仕事を共にするようになり、彼を取り巻く環境に少しずつ変化が訪れたのだ。
まず類人が当初不安視していた『格差』についてだが、案の定それは振り付けや歌割、衣装で顕著に表れた。
宣材写真撮影の現場でシャンパンゴールドの煌びやかなジャケットを羽織ったルナールに対し、類人に用意されたのは厳ついが輝きに負ける黒いライダース。美術品を際立たせるだけの添え物として扱おうとする現場監督の意図が透けて見えるようだ。
しかし、それに異を唱えたのもルナールである。
「類人さんは黒よりシルバーの方が似合うよ」
衣装スタッフからライダースをやんわりとひったくり、彼のために用意された衣装ラックからシルバーのジャケットを取り出した。
当たり障りのない適当なスタイリングをするメイクスタッフには「僕がやる。類人さんは前髪を上げた方がかっこいいんだ」と言って仕事を搔っ攫い、ルナールにばかり話題を振る雑誌の記者にはしこたま「類人さんのここが素晴らしい」という話を延々と聞かせる。ソロの仕事は全て蹴っていた。「類人さんとしか仕事をしない」というスタンスを、ルナールは貫き続けた。
最初のコメントを投稿しよう!