Track 2. ORION

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Track 2. ORION

 ルナールとは、類人(るいと)が考えた『ルーナ・()・ハミル』を並び替えたあだ名だ。  出会った当初に気まぐれで思いついたものだが、「類人さんが付けてくれた!」と興奮した様子で社長室に駆け込み、そのまま芸名にしてしまったのである。  ちなみにこれは余談だが、代々襲名してきた名家の由緒正しきロイヤルな名前を付けたいアメリカ人の父親VS絶対に日本語を使いたい純日本人の母親の仁義なき戦いは、(つき)()と読むことで平定されたらしい。  その辺の匙加減(さじかげん)は類人にはよくわからなかったが、彼の名前にも『人間だから人類を反対にして類人』なんてダジャレのような由来がある。『人類を反対にしてしまったらそれはもはや人間ではないのでは……?』と、この世の真理に足を突っ込みそうになったこともあったが、何やかんやで思春期を乗り越えてスレずにここまで成長した。  話を戻そう。  二人が所属しているのは、日本のエンタメの歴史と共に歩んできた老舗芸能事務所『ORION(オリオン)』だ。サブスクの出現で衰退の一途を辿るCD市場の中で安定的な売り上げを叩き出す男性アイドルが名を連ねている。  その三代目社長である百合子(ゆりこ)のスペシャルお気に入り、いわゆるスペオキがルナールだ。  二人の出会いは彼女が知人の付き合いで参加したアメリカの企業パーティ。主催者だったハミル財閥の御曹司ということでルナールの紹介を受けた瞬間、強烈な雷に打たれたとか。
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