2.しかし肉体は……

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2.しかし肉体は……

 それからエドワードは、十年、二十年……百年と生きた。百四十二歳になった頃、エドワードはベッドで寝たきりで生きた屍の様な生活をしていた。 「あ……あの野郎……不死の薬って言ったって、年は取るんじゃねぇか。俺の身体はよぼよぼだ。こんな体で遊ぼうったって、手も足も言う事を聞かねぇ……」  エドワードは七十五歳の頃、一度カイルに文句を言いに行った。カイルはその時すでに八十六歳で、仕事を引退して、ロンドン郊外の小さな一軒家で隠居生活をしていた。 「おい! カイル貴様! 俺の肉体はここに来てどんどん老け込んで行ってるぞ! 不老不死になるんじゃなかったのかよ!」  (とう)の椅子にゆったりと座っているカイルに、エドワードは詰め寄った。 「不老不死……不死になるとは言ったが、不老不死になるとは私は言っていない。あの時、そう、お前にあの薬を飲む事を持ちかけた時、私はきちんと言ったはずだ。『君の時間は流れていくが』とな……」  カイルのその言葉を聞くと、エドワードは激昂して拳を振り上げながら怒鳴り散らした。 「お前がっ! あの時にきちんと肉体は衰えると明言してくれたら、俺は! 俺は、あんな薬を飲まなかった!!」
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