5.愛を知ったエドワードは……

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5.愛を知ったエドワードは……

エドワードは、生まれて百四十二年で初めての安らぎを覚えていた。美しい少女に笑顔を向けられ、世話をされる。この上ない幸せだった。  エドワードとアリスは、色々な話をした。これまでの彼の人生の事、ひしめき合う車のように過ぎ去っていった過去の女達の事、長い人生で見て来た様々な人間模様。  アリスは全ての話に対して目を輝かせて聞いて、そして笑みを浮かべていた。 「エドワードの人生は、本当にドラマチックだわ」  ある日、アリスはそう呟いた。 「私の人生は、まだたったの十八年だけど。いつも貧乏で、ひもじくて。恋する時間も無くて、ボーイフレンドが居た事もないのよ。学校もバイトのせいでおろそかになって、私には学歴も無ければなんのスキルもない。だから、こうしてエドワードの傍で仕事が出来た事はラッキーだわ」  エドワードは胸がはりさけそうだった。自分は、富も時間も得たのに、何も成してこなかった。ただ、ありあまる欲を発散して、浪費して、怠惰に過ごしてきた。何も残していない、そう、子供の一人すらも、仕事の実績すらも残してこなかったのだ。 「アリス……頼みがあるんだ……」  エドワードは、震える手でアリスの手を引き寄せてこう懇願した。 「俺を、殺してくれ、アリス。首を切り落として、心臓を握り潰すんだ。そうしてくれたら、私が少しずつ貯め込んできたこの家にある財産を全て君にあげよう」  アリスは度肝を抜かれたようにこう言った。 「そんな……そんな……そんな恐ろしい事出来ないわ、エドワード!」  しかし、エドワードも引かなかった。 「頼む、アリス……! 私はもう死にたいんだ。長すぎる人生に終止符を打ちたいんだ。そして、私に止めを刺してくれる相手は、愛する君が良い……!」 「エドワード……」  エドワードもアリスも涙を流していた。重い沈黙の時間が流れる。 「私……私、決してあなたの財産を貰うためにやるわけじゃないわ……」 「アリス……! ならば、私を殺してくれるのか?」  アリスは俯いたまま話を続けた。 「私はきっと殺人者になって裁かれるわ。でもね、エドワード、あなたの悲しそうなその瞳を見ていると、もう人生を終わらせてあげたいって、そう思うのよ」 「アリス、ここには君の一家が一生食べて行けるだけの財産ならある。君ならば、それを有効に使ってくれると信じているよ」  アリスは、今度はエドワードの目を見据えてこう言った。 「エドワード、私、あなたと同じ時代に産まれたかったわ。そうしたら、あなたにそんなお薬を飲ませはしなかったし、私はあなたと良いパートナーになれていたはずだわ」  そこまで言うと、アリスはベッドに横になるエドワードの唇に、そっと自分のそれを押し当てた。 「ありがとう、アリス……私に、人生の最後に、愛を教えてくれてありがとう……」
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