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「・・・凄え・・・。あんな高い山の天辺に建物があるなんて。」
「あれこそがまさしく『マテラ・プテラ』別名、天空に立つ城
とも呼ばれしもの。」
その声に振り向くと、ケッツアールクアテロがすぐ側で
ホバーリングしている。
「まだ居たのね。案内ご苦労様。」ジルカメスが苦笑いしながら
声を掛けた。
近づいてみるとまるで雲の上に浮かんだ城のようだ。
ペガソーサの提案でその場所に降りてみた。
「たっ・・・たっ高けえええ。」
周囲にはその山に匹敵するほど高い山がないのか、まるで宙に
でも浮いているような感覚を憶える。頂上の僅かな平地にはその
建物しかなく、まさに宙に浮いた建物だ。
「天空に立つ城・・・か。」
「俺さ、高いトコは結構平気なんだけど、流石にこの高さは足が
竦むよな。」
フンヴォンも地上を見下ろしながら呟く。
「息が苦しいな。空気が薄いのかもしれん。だが、景色は
最高だな。」
「天巖山脈のデヴギリ山もこんな感じですよね。」
「そうだな、でもあそこより暖かい感じがする。」
ユーリウス達の姿を見つけたのか、この建物の関係者と思われる
人物が数人近づいて来た。
「やはり予言のとおりであったな。勇者ロナウハイド殿とその
ご一行。ようこそ、マテラ・プテラへ。私はこの神殿を司る司祭
デルアマンデスと名乗る者。宜しく勇者殿。」
「また予言かよ・・・。」ユーリウスは皆に聞こえないように
呟いた。「まあまあ。」
ジルカメスがユーリウスを抑えた。
「もうお気づきかと思うが、世界は巨大な闇の恐怖に包まれる。
そして我等の予言では闇が世界を飲み込む直前、勇者が降臨すると
伝えられていた。我等が成すべき事は、その予言の勇者殿に会い、
世界を救う為の訓示をせよ、という事だ。」
「世界を救う為の・・・訓示?。」
「左様。この地は太陽が闇に消え、そして新たに誕生する瞬間を
真っ先に捉えられる場所。絶望と希望が満ちた地でもある。全ての
恵みをもたらす太陽が生まれ変わる力を持ったこの地の力を授けよ、
との訓示だ。さあ、勇者よ。太陽に祈りを捧げ、その力を受け
取るがいい。」
「・・・って、どうやって?。」ユーリウスは訊ねた。
司祭は一瞬絶句したが、気を取り直し、説明した。
「その階段を上り、最上階まで行くと神殿の祭壇がある。太陽の光が
満ちた場所に手をつき祈りを込めるがいい。」
ユーリウスは半信半疑で階段を上り、祭壇の前へ来た。そして
言われた通りに手をつき、祈りを込めた。
最初はあまり信用してはいなかったが、身体の奥底から何か
不思議な力が湧いてくる気がした。「これが・・・太陽の力?。」
身体の中に何か入った、そんな気がした。頭の中で女神ヒヒポテが
話し掛けてくる。
「太陽がこんなに間近に感じられる場所があったのですね。」
「そうだな。」
もやもやした不安の中から、一筋の光が見えた、そんな気がした。
階段を降り、仲間達と合流した。「待たせたな。」
その時、ユーリウスの目に真っ白い美しい花が咲いているのが
飛び込んできた。
「こんな場所に花なんて・・・、高山植物か何かなのか?。」
花を手折り、なんとなくオルケルタの髪に飾った。
「ありがとう。・・・似合う?。」オルケルタは笑顔で答えた。
「勿論。」
「勇者殿!!。」振り向けば司祭がそこに待ち構えていた。
「何だ?。」
「あと、これを勇者殿に渡せと。」「それも予言か?。」
「いえ、これは先日見た私の夢枕に立った者からの指示。つまり
『夢のお告げ』であると。」
「随分と具体的な夢だな・・・。いや、確か・・・。」
「何か・・?。」
「いや、何でもない。」
ユーリウスは司祭から一本の羽を受け取った。「これは・・・。」
考える間もなく、ペガソーサが現れた「貸してくれ。」
ユーリウスは羽をペガソーサに渡した。「行くぞ。」
その瞬間、ユーリウス達は気を失った。
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