最後のその日まで

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「ついに約50パーセントにまでなったってね」 「うん、うちのクラスもそんな感じだもんね」 「AIベビーを人口として数え出してからまだ…10年くらいだっけ?」 「そうだね。歴史が動くときに生きてて、ある意味ラッキーだよね。だって、見れないじゃん? 普通。人類として生きてるとさ。長い間、人類の脅威となる生物は現れなかった。自分たちが滅びることはなかったんだから」 「滅びるって言い方、やめてよ。滅びるんじゃなくて、共存でしょ」 「そうかな」  スィーンスィーンスィーン。 「オハヨウ」 「おはよう、ユボミー」 「今日ハ15時36分カラ雨ガフルヨ。チョウド下校時刻ダ」 「そうだよね、ありがとう」 「天気予報ガ外レル心配ハナクナッタ。残ス心配トイエバ、12月24日ニ予測サレテル大地震ダナ……」 「そうだね。準備は進めてるんだけど」 「ワタシタチAI種デモ、ホボ正確ナ予測コソデキルヨウニハナッタケド、クイトメルコトハ出来ナイカラ」 「それはそうよ。結局、人類だってAIだって、自然の脅威には勝てっこないのよ」 「沙織ノウチハ、イツ出発ダ?」 「……ユボミーはいつなの?」 「7月15日ダ」 「……美亜んとこは?」 「えとー、11月2日だったかな。沙織は?」 「……うちさ、家族で決めたの。臓器交換もしなかったんだ」 「え!?」「エ!?」 「人間ノゾウキデハ、火星デ暮ラスニハ厳シスギルヨ。……モッテ72時間35分42秒ダ」 「うん、だから、火星へは行かない」 「待ってよ沙織。今ならまだ臓器交換間に合うんじゃないの? 火星対応臓器交換センターのロボが催促に来ないの?」 「来てるわ。でも、断ってるのよ。あくまで自由意志でしょう?」 「でも……」「ナンデ……」 「美亜とユボミーこそ、火星に着くまで、5ヶ月かかるんだって? 頑張ってね」  今年、2075年の年末12月24日の、中東・アジア・環太平洋大地震の予測に備えて火星移住の準備をしているのは、このクラスだと私以外全員だろう。  スクール全体でかもしれない。  
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