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夜の街と黒い猫
はっと目を覚ます。長い間夢を見ていたようだ。時刻はもう夕方になろうとしていた。アベルさんはいつものようにこちらを見て、「おはよう」と笑う。何度か戦闘があったのか、その顔に黒い血がこびりついていた。
「あ、アベルさん! 起こしてくださいよ!」
「あまりにも気持ちよさそうに寝ていたからつい」
彼はそういうところがある。どこか私に甘いのだ。今日は別の町に着く予定だったのに、これでは間に合わないかもしれない。
「少しこの辺りを歩き回ってみたんだけどね、町なら遠くに見えたよ。今からでも充分間に合う距離」
今からでも間に合う距離に町がある。その情報に「本当ですか!?」と声を上げた。アベルさんはいつものように笑顔を浮かべて、「うん」と短く答える。その頬に黒い血がついているのを見て、「また化け物が襲ってきたんですね……怪我はなかったですか?」と問いかける。彼は先ほどと同じような調子で「うん、ないよ」と答えた。
よかった。アベルさんは怪我はしないでください、と言うとそれを忠実に守ってくれる。私はそれがとても嬉しい。
それにしても町か。どんな町なのだろう。人はいるかな。設備はまだ動いたりしているだろうか。いろいろな考えが頭の中を巡る。
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