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「さ、行こうか」
そう言われて手を引かれる。なんだか自分が子供みたいだ。14歳だからアベルさんに比べたらまだまだ子供かもしれないけれど。そういえばアベルさんは何歳なのだろう。年齢の話、聞いたことがないなあ。
日が暮れ始め、少し涼しくなった道を歩く。かつかつと二人だけの足音が響き、その音は夕闇に少しずつ溶けていく。
アベルさんの言った通り、少し歩いたら町が見えてきた。四角い建物が立ち並ぶ町。規模はそれほど大きくないが、かつて人が住んでいたような場所ではありそうだ。生き残りの人がいるといいのだけれど。
「人がいるといいね」
「そうですね」
下り坂を降りながら、私とアベルさんはそんな会話をする。私たち以外の人がいるのであれば、いろいろ話を聞いて力になってあげたい。願わくば、廃墟ではありませんように。
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