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「お前たちはどこからきた」
タマさんはそういうと私とアベルさんをじっと見上げる。黒い毛並みに金色の瞳がこちらを見透かすように睨みつけていた。
「この国の城下町から来ました。タマさんはずっとこの町にいるのですか?」
「うむうむ、その通りじゃ。白き光によりこの街の人間は全員死んだ。おそらく他の町もそうだろう。何故そなたらは生きておるのかは知らぬが、これも神の導きとやらなのじゃろうて」
白き光。やっぱり私たちの街と同じことが他の町でも起こっていたんだ。
「タマはなんで喋れるの? 元から?」
「人間がいなくなったら喋ることができるようになった。これも神の思し召しじゃろう」
不思議な話だ。普通は喋ることができない動物がこうやって私たちと意思疎通をしている。普通では考えられないことだが、そもそも今の状況は普通ではない。
「男女よ、名はなんと言う」
「僕がアベル。こっちの女の子は春蘭」
アベルさんが手短に自己紹介を済ませると、タマさんはうむうむと頷いた。
「アベルと春蘭か。覚えたぞ。こちらに人間の寝床がある。其処まで案内しよう」
そういうとタマさんは私たちに背を向けて走り出す。私とアベルさんは顔を見合わせたあと、タマさんを追って駆け出した。
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