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「タマ、今日はなんだか僕のことをよく見ているね」
む、気づかれておったか。さすがじゃ。わしはその肩にぴょんと飛び乗ると、「お主を観察しておったのよ。どんな人物か気になってのう」そう正直に言葉にする。
「ふーん。僕はあんまり観察対象にならないと思うけれど。春蘭さんの方が可愛いよ?」
それはそうだ。春蘭の方が可愛い。それは当たり前だ。春蘭はおなごで、アベルは20代後半の男。どちらが可愛いかは馬鹿にでもわかる。
「アベルは春蘭に惚れておるのか?」
「ええっ!?」
此奴がこう言う驚き方をするのは稀だ。図星か、それとも本当に考えたことがなかったか。そのどちらかだろう。アベルは明らかに狼狽しているようだった。
「そ、な、内緒だよ? 春蘭に知られたら恥ずかしいから絶対に言わないでね」
人差し指を顔の前に差し出し、こちらの音量を下げるような仕草をして、アベルはそれを認めた。
「そんなにわかりやすかった? タマから見てそんなにバレバレ?」
「バレバレというよりは簡単な推理よ。他人のために働きそうにないお主が春蘭のためにほぼ無償で動いているわけじゃからな」
「そっかあ……」
顔を少し赤くして照れているその姿は、どちらかといえば男子学生のようだ。もしかしたらこちらが思っている以上に彼の精神年齢は幼いのかもしれない。
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