君がいるから

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「僕が生きている意味なんて、君を守ることくらいしかないからさ」 「え? え……?」  生きている意味が、私? そんなこと言われるとは思っていなかった。じゃあ私がいなくなったら彼はどうするんだろうか。 「え、じゃあ……私がいなくなったらアベルさんはどうするんですか?」 「うん? 死ぬかなあ。だって生きている理由がないし」 「どうして!?」  本当に「どうして!?」だ。彼にとって私はそんなに重要な存在になっていたのだろうか。彼の命を左右するほどに?まさか。 「だって春蘭がいなくなったら朝起こしてくれる人もいないし」 「朝は自分で起きてくださいよ!?」 「それに、契約したじゃないか。この花に誓って君を守るって」  差し出されたのは枯れたヒガンバナ。ああ、まだ持っていたのか。枯れた花に価値はないのに。それだけ大事にしてくれていると言うことだろうか、この花も、あの時の契約も。 「だから、君がいなくなるなんてことは有り得ないんだよ」  彼はそう言ってふわりと笑う。そんなふうに笑わないでほしい。私に守る価値など本当はないのだから。あの言葉は、自分を守るために出た咄嗟の言葉なのだから。感じるのは罪悪感。ただただ、罪悪感。
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