君がいるから

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 手当が終わると彼はすぐに横になる。寝るわけではなく、今日は私が少し寝るために寝ずの番をするのだ。彼には苦労をかけている、そう思う。アベルさんはいつもそんなことはないって言ってくれるけど。  先ほど彼は私がいるから生きていると言った。私がいなくなると死ぬとも言った。それはとても悲しいことで。どうして彼はそんなことを言ったんだろう。でも、そう言ってくれるのは少し嬉しく思っている自分もいて、最低だなと思った。 「アベルさん」 「どうしたの春蘭? 寝付けない? 子守唄でも歌おうか」 「いや、そう言うわけではなくて。ちょっとさっきの会話のことで考えていて……」  言ってもいいのだろうか。この言葉は彼を縛る鎖にならないだろうか。私がいなくなっても生きてほしいなんて、そう思うのは私のエゴなのだろうか。 「いいえ、やっぱりなんでもないです」 「ええ、気になるなあ」  彼はしばらく私から言葉を聞き出そうとしていたが、頑なに私が言わないことに諦めたのかそれ以上は追及しなかった。  これ以上私のエゴで彼を苦しめてはダメだ。もう充分彼を傷つけているのだから。 「おやすみなさい、アベルさん」 「ああ、おやすみ、春蘭」  優しい声が夜に溶ける。しばらくして、私は微睡の中に落ちていった。
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