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食事を終え、川近くで片付けをしている春蘭の隣でその行動を見ている。前に手伝おうとしたらお皿を割ってしまって、やんわりお前は何もしなくていいと言われたので、その行動を眺めている。彼女は時々チラチラこちらをみて少しやりづらそうだ。
「あ、あの、私の顔に何か?」
「春蘭が一生懸命で可愛いから眺めてた」
「かかか、かわっ!?」
すぐに真っ赤になる春蘭。これが面白くてついついそういうことを口に出してしまう。どうやらこういう文句には慣れていないようで、いつも顔を真っ赤にさせてあわあわしている。
春蘭は花売りだ。僕が住んでいた街の繁華街の方で花売りをしていたらしい。らしい、というのは僕は彼女が花を売っているところを見たことがないからだ。僕がいたスラム街から繁華街までは少し距離があったし、何より僕が繁華街に行くことはなかったから。
彼女は繁華街の一角で、血みどろの父親を前に立ち尽くしていた。白い光を浴びると全身から血が吹き出して死に至る、らしい。僕は眠っていたからその瞬間を見ることはなかったのだけれど。
僕が生きていたのは光の届かないスラム街のゴミ溜めで眠っていたからで、彼女が無事だったのは彼女の父親が彼女の盾になったからだった。
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