歩く、歩く

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歩く、歩く

 青い空に燦々と輝く太陽。気温は常に高く、水分補給は何よりも大事だ。川の水はそのままでは飲めない。飲める水を作るのは私の仕事だ。煮沸させて飲めるようにする。グツグツと煮立つ鍋、隣に用意しておくのは二人分の大きめの水筒。  今日はたくさん歩く日だ。汗もたくさんかくだろう。アベルさんはあまりそういうことを気にしない人なので、私がしっかりしなくてはいけない。  アベルさんは今日も寝ている。昨日は化け物退治で疲れているだろうし、私が寝ている時は寝ずに番をしてくれているのだ。今日くらいは少し遅めに起こしても良いだろう。  うつ伏せでくうくうと小さないびきをかいて寝る姿はまるで小動物か何かのようだ。本人に言ったらどんな顔をするだろうか。  そんなことを考えながら、水が飲めるようになる時間を待つ。  私は生かされている。そんな風に感じることがある。天罰から私を庇ったお父さん。私を守ってくれるアベルさん。不思議な縁で、今日も私は生きていた。
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