あの日の夢

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あの日の夢

 夢に見るのは、決まってあの天罰の日のこと。私の平穏な日常に、突如降り注いだ白い光。近所のお兄さんも、常連のお姉さんも、噂話が大好きなおばさんも、よくお父さんと話していたおじさんも。そして私を庇ったお父さんも。  白い光は私以外の全てを飲み込んで、私以外の全てを血塗れにしていった。何故こうなったのかはわからない。誰もいなくなった世界で聖書の本を読んでいた私は、これは神の裁き――【天罰】だと思った。  しばらくは呆然としていた。まるで魂が抜け落ちたかのように何もする気になれなかった。天罰なら私が生かされた意味は何? 何かをしなくちゃいけないの? どうして私だけが? そんな言葉が頭をぐるぐる回って離れなかった。 「うわ、ここも死体だらけか……」  聞こえてきた声に思わず体が跳ね上がる。誰かがきた。死んでいないのは私だけじゃない? 危険な人だったらどうしよう、どうすれば見逃してもらえる? 「あれ、人がいた。こんにちは、お嬢さん」  彼は私の目を見てにっこり笑うと挨拶をしてきた。白い髪に赤い瞳。珍しい髪色だな、と考えていると、途端に私が挨拶を無視している失礼な人になっていることに気づき、「こんにちは……!」と急いで返した。  これが、私と彼の出会いだった。
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