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おっさんにお経を唱えられたかもしれない話
10年前の夏。真夜中。
当時住んでいたマンションでの出来事です。
私の寝室はマンションの廊下に面していたのですが、そのマンションは、廊下での話声や足音,ドアの開閉音がかなり響くので、同じ階はもちろん、上下階であれば、どの辺りの部屋の人が出入りしているのかが何となく分かりました。
さて。その夜は なかなか寝付けなかったので、部屋の電気を消して、ベッドの真横にある机のデスクライトを点けて、寝転びながら漫画を読んでいました。
それからしばらくして、エレベーターのモーター音がうっすらと聞こえて、私が住んでいる階に止まり、誰かが降りてきたのが分かりました。
私は、マンガを読みながら「誰かが帰ってきたんだろうな~」くらいに思っていましたが、エレベーターから降りてきた足音は、私の部屋の方に近づいてきているように感じました。
「(え…こっちに来てる?)」
なんだか嫌な予感がして、私の体は固まってしまいました。
そして予感通り、その足音は私の寝室の窓の前で止まりました。
「(もしかして、カーテンの隙間から明かりが漏れているから来た?!でも、今ライトを消したら私が起きているのがバレる!)」
このとき、どう対応することが最適解か分からず、私はただ息を殺すことしかできませんでした。
すると…。
ー、ー、ー、ー、ー、ー、ー…
窓の向こうにいるであろう人が、中年男性を思わせる渋い声で、一本調子のお経のようなものを唱えはじめました。
私の体は恐怖で硬直し、真っ白な頭でただ自室の天井を見つめることしかできませんでした。
窓のカーテンをしっかりと閉めていたのがせめてもの救いです。
ー、ー、ー、ー、ー、ー、ー…
止む気配の無い男の声。
もう何がなんだか???なので、ひたすら息を殺して男が去っていくのを待つことしかできません。
すると…。
ー、ー、ー、ー、ラブユーベイベー、
ー、ー、ー、ー…
「!?」
「(今、ラブユーベイベーって言った!?)」
実際はそんなことは言っていないかもしれません。でも、このときの私にはそう聞こえたのです。
こんな直球な告白は初めてでしたが、私の頭は恐怖で真っ白になっていたため、ただ天井を仰ぐことしかできません。
その後しばらくして、気が済んだのか男は去っていきました。
せいぜい10分〜15分くらいの出来事だったと思いますが、その日から夜 寝るときは必ず灯りを消すようになりました。
しかし、そのマンションは10階以上あり、ファミリー向けの部屋〜ワンルームまでたくさん部屋があるのに、明かりが漏れていたとはいえ何故私の部屋だったのでしょうか。
私は上の方の階に住んでいましたが、私の部屋に行き着くまで全ての階を見て回ったのか。
そもそも何を言っていたのか。
10年経った今でも忘れられない、ちょっと嫌な体験でした。
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