#2.二度と思い出したくないイヤな音

1/1

9人が本棚に入れています
本棚に追加
/9ページ

#2.二度と思い出したくないイヤな音

 それから航平は湊の目を見据えて告げる。 「で、俺は心菜がアンドロイドなんじゃないかって思ってる。人間社会に紛れた」  たちまち湊は眉間にしわを寄せる。 「心菜はどう考えても人間だろ?」  自信ありげに航平は首を振る。 「考えてみろよ。心菜って見た目もかわいいし、成績も性格も良い。完璧すぎるほど。だから心菜は人間じゃなくて、実はアンドロイドなんじゃないかって俺は思ってる」  怒った表情に変わる湊。 「わかった。お前も心菜のことが好きだから、おれに告白させないようにそんなウソをつくんだろ。アンドロイドなら諦めるだろって」  図星だった。けれど、一度ついたウソをあっさり認めるわけにもいかない。 「心菜みたいな完璧な女の子が、湊を好きになるわけないだろ」  航平は湊の肩を軽く押す。肩を軽く押された湊も、航平の肩を強く押し返す。 「なにすんだよ」  今度は航平が湊の右腕をつかんで動きを封じる。湊は左手で航平の腹を思い切り殴る。湊の右腕から手を離し、逃げ出すと見せかけた航平は湊の背中に蹴りを入れる。  ところが湊は蹴られたはずみで、そばに立つ電柱に頭を思い切りぶつけてしまう。湊の頭が電柱に衝突した瞬間、二度と思い出したくないイヤな音が航平の耳に届いた。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加