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#4.とても信じられない
「以上が、私の目撃した一部始終でした」
会議室の巨大なモニターの前で、心菜が報告を終えると、すかさずひとりの監視官が挙手する。会議室にいる十人ばかりの監視官のうち、三十歳前後の男性サラリーマン姿に偽装した監視官だ。
「確認ですが、けっきょく航平も湊もアンドロイドだったわけですよね? 人間の思考や感情を反映する人工知能を搭載した。となると、二人の行動は人間の行動を反映したものだと考えて良いと?」
心菜は大きくうなずく。
「おっしゃるとおりです。航平も湊も人間社会に紛れ込ませたアンドロイドでした。人工知能を搭載したアンドロイドが人間として生きることができるか、という実験のための。
もちろん、二人は自分がそうだとは知りませんでしたが。
航平も湊も人間社会に紛れて人間として生きるうちに、彼らの人工知能は周囲の人間、つまりは人間の中学生たちの思考や感情に染まってしまって、こんな事件を起こしました」
心菜がそう返答する。
「人間の中学二年生は、そんなにいつも危険なことばかり考えているのか?」
サラリーマン型監視官が心菜にたずねる。
「残念ながら、人間の中学二年生はそういう残酷なことを考える時期でもありますから……」
心菜の言葉にサラリーマン型監視官は腕組みして考え込む。とても信じられないというように。
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