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#1.突然の雷雨のように
「おれ今度、心菜にコクろうと思ってる」
中学校からの帰り道、湊が航平に告げる。航平の胸の中は突然の雷雨のように大きな雷鳴がとどろく。けど、そんな動揺を必死で押し隠したまま、冷静を装うしかない航平。
「そうなんだ。まさか湊が心菜のことを好きだなんて想像もしてなかったよ」
それは航平の本心だ。けれど、実は俺も心菜が好きなんだとは、とても言えない。湊は親友だから。好きな人を打ち明けてくれるくらいの。
「クラス替えで一緒のクラスになったときから、ずっと好きなんだ。一目惚れだよ」
いつになく湊は真剣な目。それだけ本気だと航平は気づく。航平も湊も心菜も、みんな同じクラスの中学二年生。
「だってさ、心菜はクラスでいちばんかわいい上に成績だっていいし、それでいて性格も良いだろ? 完璧な女の子だからね」
湊の言うとおり、心菜は完璧な女の子。だからこそ湊に渡したくない。嫉妬と独占欲が芽生える航平の頭に、ある考えがひらめいた。
「なあ、心菜って言えばさ、あるうわさ話があるんだよ。湊は聞いたことないか?」
航平はお前だけに親切で告げるんだというふうに湊に切り出した。あたりをうかがうような小声でと真剣な目で。
「湊も聞いたことあるだろ? この世界にはすでに人工知能を搭載した人間そっくりなアンドロイドが紛れ込んでいるって。アンドロイドが本当に人間と共生できるのか、人間の脅威にならないかを試験するための」
航平の言葉に湊はうなずき、小声で告げる。
「おれもそんな話を聞いたことある。本当かどうかはわからないけどな」
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