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何かあったときのためにと、俺達のもとにもロボットが来た。全身薄いピンクのこのロボットは、WO(ウォー)という名前だ。英語の watch over からきているとのこと。ちなみにカラーバリエーションは9色あり、今回渡されたものはみんな違う色を渡している。
じっと5秒ほど見つめるだけで体温が表示される。36.4℃、至って健康的な数値に、ウォーくんもニッコリと笑顔になる。これが、平常値を大幅に超えると心配そうな表情になり、アラートがあがるらしい。腕に当たる部分が横に伸びて大きく広がり、そこに腕を通すと血圧も測れる。と同時に脈拍も測定できるというから本当に便利な代物だ。
日中は通常の業務をこなしつつ、アラートがあがっていないかをチェックする。そして1日の終わりに、全員分の今日の体調、体温や血圧などの測定結果を軽くチェックして業務終了となる。
「あの子、ウォーくんだっけ。可愛いのよ。朝起きたら笑いかけてくれるし、『今日はいい天気だからお出かけに最適だよ』とか言ってくれるの。時々よく分からないことを話すこともあるけど、昨日言ったこと覚えててくれたり、あと薬の飲み忘れも教えてくれたり。本当に便利よね」
そう言うのは近所の中川さん。ここの喫茶室に同じロボットを使っている早乙女さんといつものお茶をしにきている。もちろん使い心地や感想については定期的にヒアリングしているけど、こういう所での何気ない雑談で出てくる本音こそが重要な情報にもなる。
ちなみに、「よく分からないことを話す」というのは、雑談として時事の話題を出してくれるのだけれど、若者向けの話題すぎて理解できなかったらしい。これも徐々にすり合わせされるとのこと。
喫茶〈茶座〉は何でも屋の同僚でありこちらも幼馴染の原田愛那が切り盛りしているので、なるべく有用な会話が無いかをチェックしてもらうことにした。
見守りロボットは概ね好評だった。たまに熱が高めだったりしてアラートがあがる人もいて、最初はすぐに様子を見に行ったりもしていたけど、特に症状らしいものは見られず、何もしなくても翌日には平熱に戻ることが多かったので、その日家に行く用事が特になければ電話確認のみとした。
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