あなたと話がしたいから 〜茶座荘の日常〜 7

4/11
前へ
/11ページ
次へ
「体調管理してくれるのはいいけど、ちょっと血圧高めだったからってすぐ家族に連絡いくのは煩わしいのよ。娘が過剰に心配しちゃって、様子見に行こうか? なんて言うの。困っちゃうわよ」  俺達がアラートを拾い上げるし、あくまで試験的に使うものなので基本的に連絡はあまり気にしていないというご家族が多い中、早乙女さんのご家族は細かくアラートをチェックしているらしい。  この日の夜、俺は早乙女さんの話を保人さんに連携した。 「もしかしたらアラートを上げる基準が厳しいのかもしれないね。ちょっと待って」  そう言うと何処かに電話をしてからパソコンを立ち上げた。画面にはウェブ会議の画面が表示されている。 「はじめまして。渡部工業の高梨(たかなし)と申します。この度はご協力頂きありがとうございます」  窪田さんの元同僚で、今回ロボットの試験導入を依頼した人らしい。俺は高梨さんに今日の話をした。 「……なるほど、窪田くんの言う通り、少し過剰にアラートをあげてしまっているのかもしれないね。今回は初日のデータをもとに一律でアラートをあげる基準を設けているけど、本格運用の際は最初の2週間くらいはデータ取得にあてて正常範囲を細かく設定したほうが良さそうだね。可能であればかかりつけ医のアドバイスも取り入れよう。 まあ、でもアラートがあがったときの数値も問題なしで登録し続けていけば、AI側でそのデータ取り込んで学習するからそのうちアラートもあがらなくなるとは思うんですけどね。貴重なご意見感謝します。また何かあればいつでもご連絡ください」  それから、管理画面についての使い勝手等、細かいヒアリングを終えて会議終了となった。 「浩介くん、ありがとう。貴重な意見をたくさんもらえて助かるよ」  試験導入のヒアリングなんてできるか不安だっただけに、窪田さんの言葉にホッとする。念のためにと、早乙女さんのアラート基準を少し緩めにしてもらってこの日の業務は終了となった。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加