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話を聞いた高梨さんは複雑な表情を浮かべていた。
「このロボットは離れていてもちゃんと見守ってくれる、そうすることでみんなに安心感を与えられると思って作ったんですけど、考えが浅かったですかね」
今回早乙女さんにとっては家族も本人も不安にさせてしまった。だけど……思い悩んでいると、近くで話を聞いていた愛那が入ってきた。
「高梨さん、それは違います。どんな便利な機械も、使い方を誤るとその良さは失われる。早乙女さん言ってました。この機械の名前、watch overは『監視する』っていう意味がある。つまり娘が自分を監視するための機械だって。だから一緒に家にいると落ち着かなくて外出ばかりしていたんです。
一方で中川さんは言ってました。あのロボットは声をかけると反応を返してくれるし、分からないことをすぐに調べてくれて、家族にも気軽に連絡を取れるようになった。何より、ずっと不安だった孤独死の不安が軽減された、と。中川さんにとってはまさに『見守る』ロボットなんです。
モノ自体は素晴らしいものなんです。ちゃんと使いこなしてもらえるように環境を整えてあげることが大事なんじゃないですか?」
そこまで言って我に返ったようだった。落ち込む高梨さんを見てつい熱く話しをしたんだろうけど、後悔が表情ににじみ出ている。
「す、すみません。よく分からないのに私余計なことを……」
頭を下げる愛那に高梨さんはとんでもない、とむしろ頭を下げてくれた。
「私は、アラートは厳しすぎるくらいのほうがいいと思っていました。体調なんて心配しすぎるくらい用心したほうがいいんじゃないかと。
だけどそうじゃなかったんですね。過剰な心配が見守りを超えて見張られているような圧を与えてしまった。毎日それじゃ気が休まらないですよね。明日の話し合い、私にも同席させてください」
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